『Feather2』TOPえ



Feather2解説



メインタイトル

 『Feather2』というタイトルについて不審に思った方もおられると思います。

 「2」というからには当然「1」の存在が前提されている訳なんですが「Feather1」ともいえる『Feather−翼−』は南野美里氏の演出作品で、私はメカデザインとメカの原動画とキャラの動画を担当しました。その時に「このシチュエーションだったらこうした方が面白いのになぁ」と思いつくったのが『Feather2』なのです。従って『Feather−翼−』と『Feather2』は、シチュエーションは全く同じと云うことになります。

 同様に『GIII』の前の話の『Beat out a bunt to first』という作品があってコンテまではできているのですがこれは諸事情があって制作に取りかかることはないでしょう。


少年と裸の死

 もともとは『Feather−翼−』で最後に女の子が裸になる、というのがあってそれはその文脈では意味のあるものではありましたが私がおんなじ様にやってみたら全く別のものになってしまいました。

女の子が裸になれば人目も引きましょうが男の子が、しかも死体で裸でいたらなんか惨めですね。

ただ、この作品で、ということではなかったのですが主人公が無惨に死んでその死体が見ず知らずの人に何の思い入れもなくゴミ同然に捨てられると云うのはいつかやってみたかったのです。一見、主人公を突き放している様に見えますが、今となってはどうせ野垂れ死にするんだろう私にはあのシーンを見たらあぁあれは私だなぁと思ってしまいます。

というわけで少年が裸で死んでいると云うことの意味はそう云う見た目以上の哲学的な意味などはありません。勿論、理屈はいくらでもつく訳なんですけど。

主人公が死ぬというのはよくある安易な締め方だとは思いますがこの作品に関しては実は最初っから死んでたりなんかもするのでそういうのとはちょっと違うと思います。


赤い空

 赤い空のシーンは設定上、夜なのですが夜空をマーカーで表現するのに暗いからってBLで塗ったりすると却って変になっちゃうし、よくある青い夜空も、マーカーで塗ってしまうと昼間と区別が付きにくいので思い切って変な色にしようと思って試しに手元にある画材で赤く塗って見たらいい感じだったので更によい画材を探して結局スピードライマーカーにたどり着きましたが紙に滲んでフォーカスがあってない感じが出たし、ムラが出ないし大変良い感じに仕上がりました。

 予告の撮影を手伝ってくれた古橋様も「透過光みたいな色だな」といってましたが、その予告を見たある人が「この空ってどうやって撮ったの?」と聞かれてやはりそう見えるんだ、と妙に感心しました。でも、これからデジタルで彩色してゆくとそのような出会いが無くなるかと思うと少し寂しいです。

 演出上の意図としては、低く垂れ込めた雲に地上で燃える炎が反射していると云うことでそのことによって画面全体に不安感を漂わせる、ということです。

 昔、夜、外を歩いていたときに、遠くの空が真っ赤で、それが妙に印象に残ってて、それで、ということはありませんが「Feather2」の展開を思いついたときにその時の寂しさとなにか一致するものがあったのかもしれません。

 実際には変な色の空、というのは「FEATHER予告」で黄色の空をやったのですが、これは会社で仕事がないときにらくがきをしているとき、そのらくがきに色を塗ったときに手元にある色鉛筆の色数が少なかったのでそのらくがきで使っていなかった黄色を塗ったときにいい感じで、本来は別の作品に使おうと思っていたのですが、まだ、その作品は手が着けられずにいます。


黒衣の少女

 あの黒衣の少女は『Feather−翼−』にでてきたまんまのキャラで、設定したのは南野氏なので究極的には私にも理解不能ではあるのでしょうが、『Feather2』に関してのみ云えば少年をお迎えにきたどちらかといえば死に神のようなものかもしれません。

『Feather−翼−』に準じて天使のように扱っておりますが、天使とは云っても結局サブカルチャーでさんざん消費されてきた天使のイメージでしかありませんので、例えば天使の輪が物体として存在などしていたり、あるいは(おそらく子供を産める)女の子であったりとか 今見返すともうちょっと踏み込んでも良かったのかなとも思いますが。


使用画材

1・彩色とトレス

 キャラは水性のマービーマーカー、メカとBGは油性のスピードライマーカーで塗ってます。
実線のトレスはキャラ、BG共ピグマ、色トレス線は肌の部分はマービーで、他の部分は全てシャープペンや鉛筆でやってます。

 Cut11等の曳光弾の黄色の影もシャープペンを使用しています。これは学生時代、長谷川亮一がやっていたもので、意外と判らないものだと感心してそれいらい私もずっとやってました。

 ロボットのコクピット内のモニターのレティクルの白い線は計算用紙にBLのピグマでトレスした絵を通常の動画と同様にビデオカメラで取り込んで編集ソフト反転して重ねてます。

 Cut11の顔から流れる血は画材屋で売ってる東映アニメックスでセルにトレスしました。


2・ウラウチ

 動画部分を切り抜いてBGと重ねる場合、動画が透けてBGが見えてしまうのを避ける為に動画の裏にいろいろな加工を施して透けないようにします。これをウラウチと呼びます。

いくつかあるウラウチの手法のうち、『Feather2』で主に使ったのは動画の裏に厚めの紙を貼り付けるという方法です。ここではトンボピットアートを主に使って貼りつけました。「しわがでない」のが売りだけに比較的綺麗にはれるようです。というよりハイパワーだと普通にしわになりました。

Cut12などはそれで動画がゆがんでしまってロボットの持っている銃が動きの中でぺこっと折れてしまってました。本篇の撮影前には直しましたが。

 これでたいていのカットは大丈夫なのですが中にはBGのコントラストが強く、そこに重なる動画の部分が肌等薄い色で塗られていた場合、それでも透けてしまう場合があります。その場合は肌の部分のみ修正液を塗ります。『Feather2』の場合は主にリキッドペーパーを使いました。『星に願いを』の時は少しだけ安価なライオンミスノンを使いましたがこれは水性なので薄い紙に使うと紙がふにゃふにゃになってしまいます。

全面に修正液を使用しなかった理由は経済的な理由と、時間的な理由です。経済的な理由はそう云うことなのですが時間的な理由は修正液を動画の裏全面に塗るよりは紙を貼り付けた方がかかる時間が短い、ということです。

更に時間がかかる方法として、動画の裏を普通の鉛筆で塗りつぶす、というものがあります。

これは『営繕マン學而篇』の中村祐治氏が制作中に作り出した理論で、私も『星に願いを』の仕上の最初の頃はこれでやってましたが表の動画部分も色鉛筆で塗っていたこともあってすぐに、「なんかこれって、塗る枚数、倍にならないか?」ということに気づきそれまで経費がかかるということで敬遠していた紙を貼り付ける方法と修正液を塗るという方法を採用することにしました。


3・セル

 この作品はペーパーアニメですが一部にセルを使用しています。

動画を切り抜くカットでその絵がフレームの外にでる部分がない場合、それをセルに貼りつけてBGに重ねるのです。

セルは画材屋で売ってる市販のものを使用しました。

セルに彩色済の動画を貼り つけるのには基本的にニチバンセルタックというセロファン素材の透明な両面テープを使ってます。これはなかなか文房具屋には置いて無くて、紙素材のナイスタックという両面テープの方が断然手に入りやすいのですがはみだしたときに素材の紙が見苦しかったので全く使ってません。ところがプロの現場では塗り終わったカナビー(YAT)を切り抜いてナイスタックで別のセルに貼りつけていたので驚きました。

一部、トンボピットアートとトンボハイパワーというスティック糊を使ってセルに貼りつけていますが、ピットアートは貼りつけた時にしわがでないのが売りなのですが貼りつけてから撮影までかなり時間が経過していたせいか撮影時に剥がれてきたりしてました。ハイパワーはピットアートよりは粘着力が強いようですが糊が白いのではみ出したときに白く残ってしまうのが難点ですね。

強度や使いやすさの点ではやはりセルタックが一番良いのですがただ、貼りつける位置がずれてしまった場合、剥がして貼り直すというのが大変でした。


4・動画の側面を塗る

 「動画の側面を塗る」とは、動画を切り抜いた時に紙の厚みの分だけ白い、塗っていない部分ができてしまい、そのまま撮影してしまうと動画の輪郭に常に白い部分がノイズのようにでてしまうので、そこをトレス線の色(ほとんどの場合はBL)で塗りつぶす、ということです。

セルに貼らない場合はマービー1400で十分可能で、色トレスの場合も対応できるのですが、セルに貼りつけた動画の場合はピグマ筆ペンを使って筆の先でセルを塗ってしまわないように慎重に塗ります。ただ、水性の場合はセルを塗ってしまっても丁寧に拭き取れば大丈夫なのですが。

セルに貼らない動画をピグマ筆ペンで塗ると、筆先がちょっとづつ切れていって、しまいには首の皮一枚ではないけれどそんな感じでちょっと力が加わるとぼとっと落ちそうになって気持ち悪いです。


彩色テクニック

 油性水性ほぼ共通で、『Feather2』でのマーカーの使い方に関して、少々裏技的なことを述べたいと思います。


1・1色で影をつける

 通常、影をつける時は、ノーマル色より暗い別の色で塗る訳なんですが、なかなか良い色がない場合、1本の同じマーカーで影色をつくります。

『Feather2』では少年の乗るロボットで使っている手法ですが、まず、影の部分を塗って、同色の部分を先に塗った影の部分も含めて塗り、更にそのあとで影色の部分のみを重ね塗りします。

最終的に影の部分は3度塗りになり、影っぽく見えるようになります。

 但し、水性マーカーを使用する場合、2度塗りまでにとどめておいた方が無難です。余り重ねすぎると紙がぼろぼろになってはがれてきます。


2・複数色で影をつける

 これは通常の方法ですがこの場合でも影色の部分を2度塗りにすると良いです。

この方法でも先に影色を塗ってそのあとでノーマル色で全体を塗ります。それによって影色がなじんで別の色で塗っているという違和感が多少なりとも薄らぎます。

また、ノーマル色と影色を重ねなしで塗ろうとするとその境目で色がはみ出してしまい、その部分のみが2度塗りになってムラになってしまうことが多いのでこの手法を使うとあらかじめ2度塗りになるのでそれを避けることができます。


3・ノーマル色の2度塗り

 これは、女の子の服のノーマル色の部分で使った手法ですが、女の子の服の影色がBLなので、なかなか合う色が特にマービーではありません。普通の色ではBLに負けてしまうし、濃い色では区別が付かなくなってしまうので普通の色、この場合、マービーNo.17ですが、影色を塗る方法を応用して色を濃くして塗りました。

これらのことは法則化はなかなかできないことですし、またしてはならないことだと思います。

作品内容とキャラと使用する色によって変わってきますし、実際に何度も塗ったり、また、画材を探したりして合う色を決めてゆくのが重要だと思います。


Follow



 FollowのCutでは長いBGを使っている訳なんですが、それは長い紙を使ったわけではなくて通常使っているB5のコクヨの計算用紙を貼り合わせて長くしています。

ただ、それだとどうしても継ぎ目が見えてしまうので継ぎ目の部分は上に電柱を貼ったり建物の端のところで切って貼り合わせたりして目立たないようにしています。

この方法を使えば無限に長いBGを作れるのです。
撮影は大変になりますが。


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